PACUとは
What is PACU

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PACUは postanesthesia care unit の略です。
日本語だと、日本PACU研究会(J-PACU)では「麻酔後ケアユニット」という用語を推奨しています。
病院によっては術後回復室あるいはリカバリールームと呼ばれていることもあり、定義はまだあいまいです。

手術直後には多くの問題が起こり得ます(術後痛、悪心・嘔吐、シバリング、出血、神経障害、静脈血栓塞栓症など)。
これらは早期発見し、早期介入することが重要です。
麻酔科が管理するPACUは、手術部フロア内あるいはごく近傍に設置されます。
全身麻酔、区域麻酔、鎮静管理の後の患者さんのうち、ICUやHCU(ハイケアユニット)に入室する以外の患者さんが、一般病棟に移動する前にPACUに入室します。

PACUの目的は、術後患者さんの全身状態への継続的監視と必要に応じた介入によって、安定した全身状態で一般病棟へ橋渡しを行うことです。
PACUに期待されている役割は3つあります。

① 呼吸・循環・意識の評価といった術後安全性の向上
② 痛み・低体温・悪心嘔吐の評価といった医療の質の向上
③ 各手術室を早く開けたり、帰室病棟の作業負担を減らすことによる、効率的運用への寄与

PACU退室基準が術直後の管理のゴールとなります。

PACU退室基準の例

意識 呼びかけにある程度はっきり反応する、せん妄がない。または、術前と同等
鎮痛 Numeric Rating Scale≦5
運動 四肢が動く、術中体位による神経障害なし
嘔気 なしまたは最小限
呼吸 呼吸回数10-25回/分、酸素投与下SpO ≧96%、酸素なし SpO ≧93%、パターンが良い、深呼吸ができる、咳ができる
循環 心拍数が術前の±20%、収縮期血圧が術前の±20%
出血 ドレーンの量と性状は許容範囲、創部出血は許容範囲(包帯材の交換不要)
体温 36.0℃以上、シバリングなし
投薬 15分以内のオピオイド投与なし
懸念 患者に対する懸念(なにか心配)なし

諸外国ではPACUが標準的に運営されていますが、日本の全国調査(2012~2015年、155施設)でPACUがあるのはわずか16.1%でした。
ところが、PACUがない施設の60.0%は必要性を感じており、近年では日本でもPACUを運営する施設が増えてきています。

PACUがない病院では、手術終了後も各手術室のなかで患者さんの観察を行っています。
ですので、PACUがないからといって安全ではないというわけではありません。

     名古屋市立大学病院